夜明けまで3時間

独り言ごちゃまぜボックス

めちゃくちゃ召喚サークルまで歩くのが遅いエドモン・ダンテスの話

エドモンミリしら二次創作です エドモン&エドモン中々呼べないすべてのマスター(詳しい事情とかは自分のに寄せている))

 

 ふと。名前を呼ばれた。

 何とも情けない声だ。耳を澄まさなければ聴こえないような。

 エドモンに来てほしい、とその声は訴えていた。

 ある時聴こえたそれを皮切りに、頻りにオレの耳には同じ声が届いた。

 クク、ハハ、クハハハハ。面白い。数いる英霊の中でもさしたる力のないオレを、好き好んで。

 暗闇の中での退屈しのぎにはなるだろう。

 

 それから半年が経った。声は未だ止まない。どころかより頻繁に、強くなってさえいるほどだった。

 何故ここまでオレを求める、共犯者よ。ン? いや、よく見ると共犯者ではないな。は? 監獄塔未プレイ? 復刻終わってから始めたから? ……マジで何故?

 ……ほう。サポートで借りて一目惚れしたと。

 

 浅。

 

 いや、浅いな!! 一人だけ後ろ向きで闘うのがいいだと!? なんだ馬鹿にしているのか!

 きょうはんしゃ……いやもうお前でいい。お前なぞお前でいい。

 何にせよ、お前は変な人間だ。素性もロクに知らぬ、ただ見た目と雰囲気のみで気に入ったサーヴァントにこうも焦れ込むとは。

 だが、いいだろう。小さく弱き人間よ。ともあれお前の声はオレに届いたのだ。それはもううるさいほどに。

 幸い、じきに召喚サークルがオレを通すべく暫し開かれる。お前のサークルへオレは歩んでいこう。そうも呼ばれ続けて応じぬオレではない。

 待て、しかして希望せよ! 凡庸で弱き人間よ!

 

 ……さて。

 あれから幾日か過ぎた。

 オレはまだあの人間のカルデアへと至ってはいない。

 オレのための門が開かれるまでに何度か他の

英霊を呼ぶそぶりは見せたものの、開かれてからこの方あの人間は、必死の形相で召喚サークルをオレ一人のために回している。

 しかし、オレは奴の前に姿を現さない。

 皐月の王が召喚に応じた。賢王も応じた。一見傍若無人に見えて、賢王はわりに情に厚いのである。たとえ(お前じゃない……)などとあるまじき反応を召喚者に見せられたとしても。

 もう百回の召喚が成された。しかしオレは応じない。

 何故応じないのか。

 理由は簡単だ。

 応じられないのである。

 では何故応じられないのか。

 これも簡単な答えで済む。決して難解な心理状態などに由来している訳ではない。

 

 

 遠い。

 

 

 そう、遠いのである。何を隠そう、オレのいたところから奴の召喚サークルまでが、異様に遠いのである。虚数も関わる場なので距離は絶対的なものではないのだが、何だかよく分からんがとりあえず確かな実感として、遠い。

 そしてもうひとつ、これは正直認めたくないことなのだが、

 

 

 オレの足は遅い。

 

 

 何だか全く分からんが遅いのである。速く走れるという「自動車」の一つと名を同じくするメルセデスと恋人であったとは思えぬ鈍足である。

 クイックサーヴァントなのに何故か?

 オレが! 知りたい!

 誓って言うが、オレは努めて急いでいるのである。オレを呼ぶ声も少なからず焦りと怒りを孕み始めている。何を隠そうオレに残された時間は少ないのだ。門は限られた時間しか開かれてはいない。

 しかし、残りの道のりもこれまた果てしなく遠い。何らかのきっかけで一瞬にしてショートカット出来るはずだが、残念ながらそのきっかけとは「運」なのである。もはや誰にも関わることの叶わぬ領域だ。

 既に多くのカルデアに他のオレが召喚されている。もう奴らスルンスルンと召喚されている。何故だ。あまりにも理不尽だ。理不尽に慣れているオレではあるが、それでも耐えがたいほどの理不尽だ。

 

 単発? 単発がダメなの?

 コーヒー飲めばいけるの!?

 

 何やらぶつくさと議論している声が聞こえるな……。単発でも10連でも最高レアサーヴァントの排出率は変わらんとお前のなかで結論が出ていただろう。

 コーヒーか……確かに、オレも今は歩き続けて随分疲れているからな。その芳しい臭いがあれば、いくらかは……おい! やってみるわ~とか言いながらコーヒーがない状態でしれっと2回も回すな! オレはまだここ(遠い)だ!

 

 一体、いつこの長い旅は終わるのだろう。オレがたどり着くのが先か、奴の石が、意思が尽きるのが先か、はたまた召喚サークルへの門が閉じるのが先か……。

 

 足がガクガクと震える。もうどれくらい歩いたのだろう。このような仮初めの体とて疲れは感じる。限界はある。

 百回だ。百回の召喚に、オレは一度も応じられなかったのだ。

 絶望の二文字が頭に過る。オレが何度も味わい、そして相反する言葉で歯向かおうとしている、二文字が。

 

 諦めないよ、と声がした。

 

 フリクエもストーリーも回れるだけ回って、石を集めて、呼び続ける。だから、ゆっくりでいいよ。まだ、時間はある。

 

 それまで耳にしていた奴のものとは思えない、確かな強い意思の籠った声だった。

 そこには、希望が、あった。

 こんな、ロクでもない状況で。いくらの石も手元にない無力な人間は、未だ希望を捨てていない。

 オレは奴に言ったのだ。

 待て、しかして希望せよ、と。

 

 クーー

 クハハハハ!

 何と愚かなのだ、お前は!

 しかして、より愚かなのはこのオレだ。お前よりも先に絶望しようなどと! 他ならぬお前が、希望に燃えているというのに!

 

 ならば、人間よ。オレはまた言おう。

 待て。しかして希望せよ!

 

 

 

 

 

 

 もう、足は動かない。

 

 しかし、たどり着いた。辛うじて持ち上がるこの腕を伸ばせば、召喚サークルに指先が届く。そうすれば、奴との契約は成立する。

 ようやくここまで来たぞ、オレを呼ぶという人間よ。

 どれくらいの時が経ったのかは分からん。ともすれば一度門は閉じたのかも知れない。だとすれば、あれからあの人間はまた半年か、一年か、それよりもっと長い間か、待ったのだろう。

 けれども今門は開いていて、オレはその前に立っている。

 いい加減来てよ、巌窟王エドモン・ダンテス。

 疲れた声で、呆れた声で、何より怒った声で奴はオレを呼ぶ。

 耐えがたい時間だったろう。いい年をしてオレが来ないことで落ち込んだり、放心状態になっていたのを識っている。

 

 オレは腕を伸ばした。

 指先が、夢にまで見た召喚サークルの縁に触れる。環が虹色に染まった。オレのような者にでも、そのような色に輝いてくれるらしい。

 

 奴の顔が見えた。信じられないように目を見開いている。本当に、何の特徴もない凡庸な顔だ。オレにはそう思える。

 けれども、同時にひどく満たされた気持ちになった。

 何故だかわからないが、お前はオレに惹かれたのだろう。オレも同じだ。しつこく呼び掛けるその声に、何故だかオレは応じようと歩き始めた。

 何の因果にも支えられていない、曖昧で危うい縁だ。

 けれどもそれで充分なのだと、オレは思っている。

 

 オレの姿がお前の前に現れて、お前は安心したような、何だか泣きそうな顔をする。

 

「オレを呼んだな!」

 

 オレは叫ぶ。

 

「呼んだ! もうめちゃくちゃ、呼んだ! おっそいわ!!!」

 

 お前も叫ぶ。

 

 クハハハッ、そう怒ってくれるな。

 オレも永らく待っていたのだ、凡庸で弱い人間よ。

 お前をマスターと呼べる、この時を。

 

 

 

 

 

続(続きはカルデアで! 爆)

 

久々に更新したと思ったら夢小説とか、ここの管理人はどうかしている。どうかしている。

要するにFGOエドモンが来ない自分とすべてのマスターに向けた応援歌ですね。作中で言ってる通り監獄塔未プレイ&未召喚でほぼほぼエドモン知らないのでキャラ崩壊してたらってかしてると思いますごめんなさい。

召喚、頑張りましょ……!